[夏のおさらい会]で小5のY君のバッハの無伴奏パルティータは、とても印象に残る演奏でした。
彼は4歳の時からレッスンに通って来てくれています。小さい頃はレッスン室のあらゆる物に興味を持ち手にとりたがったり、また時には私の膝の上でヴァイオリンを弾いたり歌ったり、子どもらしい可愛い子です。レッスンに来ると、1週間お母様と頑張った成果を聞き、また1週間お家でのお稽古に励む。一回もレッスンを休んだ事はありません。
よくお母様は、「ちっとも練習に集中してくれません」とおっしゃっていましたが、私とのレッスンはとにかく楽しみにしてくれている事は分かりました。
人から見たら、この子は話しを聞いていないんじゃないか?という場面もありました。しかし、興味のある楽譜を見つけ楽しそうに声を出して読んでいても、私の存在をしっかりと感じているY君でした。
小4になる頃からひとりでレッスンにいらっしゃるようになりました。
明るく「こんにちは!」と元気に玄関に入ってみえ、相変わらずレッスン室のピアノの上に今まで無かった物珍しい本や楽譜に興味を持ち、眺めたり質問したり。でも小さかった時のように飛びついてはいきません。安心してY君を見ていられます。この頃から、お家でのお稽古はひとりで取り組んでいる様子でした。
前よりいっそうお家でのお稽古で取り組むべき事を詳しく伝えるレッスンとなりましたが、最初は慣れず明らかに練習不足と思われるような調子でした。
Y君がお家でひとりできちんと練習に取り組めるよう工夫が必要でしたが、勘のいいY君はすぐにひとりでの練習を定着させてしまいました。
時々お母様から聞くY君のお家でのお稽古は、相変わらず「なかなか集中して練習してくれません」ですが、
お母様のお家でのお稽古の姿勢、Y君への接し方、いつも精神的な高さを感じます。11歳になったY君は本当に立派に育ったな、と思わせてくれるバッハを聴かせてくれました。演奏中、曲の間合い、弾き終わったときのバッハの暖かい空気感。Y君の人間的な高さを感じました。
子どもが立派に育っていくには、
【急ぐな休むな】の精神が必要です。
Y君は、自分のヴァイオリンを淡々と見つめ、音楽の高い場所に行く事を身につけはじめました。きっとヴァイオリン以外の事も、そうしているであろうと想像します。
これからも頑張っていただきたい、そう思っています。